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【日本文学科出身の私が教える】日本美術を学ぶための3つの方法【初心者向け】

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こんにちは。荷物運び用荷物(@nimotsu_hakobi)です。

国内旅行でいろんなお寺や美術作品を見たことをきっかけに、

日本美術の魅力に憑りつかれてしまった私が執筆するブログへようこそ。

 

この記事では、

日本美術の初心者がどう学ぶか、どこで鑑賞するかについて書いていきますね。

 

目次

 

近年の西洋美術ブーム

博物館・美術館の来場者数ランキングはこんな感じ

近年、西洋美術に興味を持つ人が急増しています。

デートに「モネ展」なんていうのも普通ですよね。

書店ではいつからか、

「ビジネスには教養として美術の知識が大事!」みたいな本が並んでいます。

 

少し前になりますが、

2018年の美術展覧会(特別展)の来場者数を見てみます。

1 レアンドロエルリッヒ展
2 建築の日本展
3 ルーヴル美術館展
4 ゴッホ展
5 至上の印象派展
6 北斎とジャポニスム
7 縄文展
8 仁和寺と御室派のみほとけ

「美術手帖」の記事を参考にしました。↓

1位はレアンドロ・エルリッヒ展の61万人。2018年美術展覧会入場者数 TOP10|美術手帖

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写真撮影をしている方が大変多かった特別展でした

会期の長さは考慮されていないので、

会期が長い方が有利になってしまいやすい結果ではありますが、

おおむねこのランキング通りと思っていいはずです。

 

人気なのは、印象派以降の西洋美術・芸術であることが伺えます。

また、一人の画家単独の展覧会も受け入れられやすいのでしょうか。

 

このランクインした展覧会の、

インスタグラムでハッシュタグを付けて投稿された数も調べました。

 

1 レアンドロエルリッヒ展(3.1万)
2 建築の日本展(7516)
3 ルーヴル美術館展(9982)
4 ゴッホ展(1.3万)
5 至上の印象派展(4516)
6 北斎とジャポニスム(2197)
7 縄文展(5336)
8 仁和寺と御室派のみほとけ(3327)

(2019年3月5日当ブログ調べ)

 

レアンドロエルリッヒ展とゴッホ展の投稿が多いですね。

次点でルーブル美術館展。

インスタグラムのアクティブユーザーは若年層が多いため、この数が多いほど若者に人気と言って良いと思います。

 

そう。

若者はあまり日本美術には関心がないんですね…。

俗に言う「インスタ映え」しづらいからかもしれませんが、

それにしても24歳の私の周りで

「日本美術見に行ったよ!」

みたいな話は一度も聞いたことがありません。

 

でも!

日本美術をたくさん見てきた私としては、

もう少し良さを知ってほしいなと思います。

 

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子ども向けにこんな特別展が開催されることもあります!
こんな人に読んでほしい!

この記事を通して、こんなあなたに役立ってほしいと思います。

・日本美術もなんとなく気になるけど、知識がないのでどこから手をつけていいかわからない

・普段は西洋美術しか見ることがない

・検定や授業のために日本美術を学ぶ必要があるが、学び方がよくわからない

日本美術を鑑賞してみたい日本美術を最近鑑賞し始めた

 

日本美術を鑑賞したいけれどどうするのがいいのかな?なんだか取っつきづらい…という問題を解決するために、分かりやすくて楽しい、挫折しない学び方を教えます。

 

日本美術へのアプローチ方法は3つ

1.書籍から学ぶ

この方法が最も手軽にできますね。

私が様々な日本美術に関する書籍を読んだ中で、

初心者が抵抗なく読める易しくて面白い本をご紹介します。

 

■『ヘンな日本美術史

 

 

高校2年か3年のときに、書店で出会った本。

タイトルに惹かれて買いましたが、とてもこれが面白い。

社会人になって読み返してわかったのですが、どうやら高校生の私は内容をちゃんと理解しきれるに読んでいたようです。明らかに大学に入るまで知らなかったはずのことがいくつも出てきたので。

面白いポイントは、画家の視点から、日本美術を論じている(絵画)ところ。

その絵を描いた当時の画家が頭に浮かんでくるかのように、描かれた瞬間をリアルに感じることができます。「こう描いたのではないか」と考察する部分は、まさに絵描きならではです。

初心者には少し難解な箇所もあるかもしれませんが、全体を通して読み物として面白く読めるので、おすすめです。

 

■『国宝の解剖図鑑

 
 

 

国宝検定を受検する際に、

この本をテキストとして使用して勉強しました。

図入りで解説も易しく丁寧、本当に使えました。

国宝検定の初級も上級も合格したのは、この本のおかげです。

この本のいいところは、イラストが豊富で、詳しく書きすぎていないところ。

詳細まで踏み込みすぎている本って、この手のものは意外と多いんですよね。

初学者が挫折する原因として、知らない言葉で知らない言葉を説明され始めるとわけがわからなくなってくる、というものがあります。本書はその点の心配は要りません。国宝に関する絞ったポイントだけを書いていますので、入りとしては十分だということです。

一点注意です。写真の掲載がありませんので、写真がないと物足りないという方にはおすすめできません。全てイラストですので、実物を見たい国宝が見つかったらGoogleで画像を調べながら読むと良いでしょう。

 

他にも自分に合った本を探したいという方は、まずは図書館に行くのがおすすめです。日本美術の本で写真が入っていたりすると、価格が高いものが多いからです。気に入ったものは改めて買うとよいかと思います。

 

2.博物館や美術館に行ってみる

■都内にはこんな博物館・美術館がある

主に日本美術を見ることができる機会が多く、また、私が行くことの多い博物館・美術館を挙げてみます。

・東京国立博物館(上野)

・東京都美術館(上野)
・根津美術館(青山)
・出光美術館(日比谷)
・太田記念美術館(原宿)
・江戸東京博物館(両国)
・サントリー美術館(六本木)

このあたりの情報を公式HPやTwitterで拾っておけば、日本美術を楽しめます。

 

■各博物館・美術館の傾向

各施設には、通っていくとわかりますが特徴があります。

例を挙げていくつか特徴を紹介しますので、どこの博物館・美術館に行くか迷っている初心者のあなた!是非参考にしてください。

 

・「特別展のテーマ
東京都美術館は、いかにも大衆受けしそうなテーマ設定が多く、「これは見たい!」と思える作品が高確率で来ます(笑)。跳ねる特別展は何時間も並びます。東京国立博物館も、自館で持っている作品が非常に多いので、幅広いテーマの特別展が開催されます。サントリー美術館は、すごく有名な作品が並ぶことは少ないながらも、テーマ設定の切り口が「なるほど、そう来たか!」と思わせます。今まで面白かった特別展を一つ載せておきますね。→原安三郎コレクション 広重ビビッド サントリー美術館

根津美術館は、初心者が特別展に行くには少し難しいと感じる回もあります。

 

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こちらは絵巻を「所持している」側に焦点を当てた展示でした

・「展示物のボリューム
根津美術館出光美術館はそんなに展示数が多くないので、最後まで見終えてもそんなに疲れません。特に根津美術館は展示数が少なく、広い庭も散歩できるので、満足度が高いかもしれません!

東京国立博物館は、有名な作品も並びやすく、がっつりした特別展になります。第一部と第二部に分かれており、日本美術好きでもちゃんと見たら疲れます。終わったあとに疲労感ばかり残ってしまうと、好きになれません。もしも行ったら、第一部の一つ目の作品から全て丁寧に見ていくのはおすすめしませんので、見たいもの以外は軽く見る程度でよいかと思います。

 

・「解説の読みやすさ・わかりやすさ
出光美術館は、解説が大変丁寧です。長文。学芸員の方の熱い思いが伝わってきます。

東京国立博物館は解説が難しい(知らない言葉を知らない言葉で説明する)ので、初心者向けとはあまり思えません。音声ガイドが500円で借りられるので、そちらを借りてみることをおすすめします。

 

3.収蔵されている実際の場所に行ってみる

私が一番おすすめするのは、やはりこれです。

 

・実際に行きひと手間かけると、記憶に残る

その場所まで飛行機や電車で向かって、たくさん歩いて階段を上って、地図を見て向かっていたのになぜか迷ってしまって…そんな苦労をして辿り着いた先には、どんな素晴らしいものが待ち受けているでしょう。記憶に残りやすくするためにも、実際に自分で時間とお金をかけて見にいくことはとても大切です。

 

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姫路城は上まで登ったからこそ防御力の高さを実感できます

・その文化財のあるべき場所で見ることがいちばん

屏風は、照明で明るくなったガラスケースの中で鑑賞されることを想定して制作されたわけではありません。和室で自分の左右に配置して、暗い部屋で畳の上に正座して鑑賞されていたのかもしれません。すると、自分が鑑賞する場所(建物)はどこなのか?視点の高さはどれくらいか?という、どこでどうやって見るのかという視点が重要になります。作られた時代背景を知り、よりその時代の鑑賞者の視点に自分の視点を近づけることで、より鑑賞対象の理解が深まります。

 

一方で、日本の文化財が抱えるこんな問題も…

日本の文化財には様々な素晴らしい名品至宝がありますが、一方でこんな課題もあります。

 

建築の説明ばかり

これは観光していて本当に感じます。観光スポットに行ったとき、解説パネルの内容はその建築自体の説明であることが多いと思いませんか?建築でなくても、「〇年に、〇氏が、〇という材料を使って作りました。〇に所蔵されています」という解説だけ、という場合が大変多いのです。建築や材料のことを知るのも大切ですが、本来鑑賞したあなたが浮かんでくるのは、当時ここはどんな使われ方をしていたのか?誰がいたのか?使っていた様子ってどんな感じなの?のような疑問ではないでしょうか。そういう深くまで踏み込んだ事柄を教えてくれる機会はとても少ないと感じます。ボランティアスタッフが面白おかしく説明してくださる施設もありますが、初めからこのような疑問や説明に対応している施設が増えてほしいですね。

 

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ガイドスタッフの方のお話が面白いです
安すぎる入場料

日本の歴史的建造物などの観光スポットは、諸外国に比べてかなり安いそうです。観光名所、海外と日本の平均入場料の平均がこちらです(少し古いですが2015年11月時点の数字です)。

海外平均 1891円
国内平均 593円

なんと!海外諸国は日本の3倍以上の料金を取っているんですね…。日本の入場料は相対的には安すぎるとされています。確かに、海外での観光代ってバカになりませんよね。

この結果を踏まえて、日本は歴史的観光施設の入場料金を上げ、より魅力的な展示方法を検討していく必要があると思うのです。

 

この記事の後半の参考書籍はこちらです。国内旅行が趣味で様々な観光スポットに訪れている私の実感として、かなり実情に近いと感じました。↓

 

 

以上、課題も少し説明させていただきました。実際に鑑賞するにあたり、このあたりを頭に入れておくといいかもしれません。


「東京都美術館の公式Twitter」が教えてくれたこと

最後に、こんないいツイートを見つけたのでご紹介します。

 難しいことは考えない。

ただ、可愛い、かっこいい、面白い、それでいいと思います。そんな入口から、日本美術の世界で見ても引けを取らない魅力を味わってほしいです。

 

これから日本美術に触れてみようかなと思っているあなたに、少しでもお役に立てれば幸いです!是非、楽しい日本美術ライフを始めてみてください。

 

参考文献

参考文献を載せておきます。興味のある方は読んでみることをおすすめします。

・山口晃『ヘンな日本美術史 [ 山口晃(1969生) ]』( 2012.11.1/祥伝社)

・佐藤晃子『国宝の解剖図鑑 [ 佐藤晃子 ]』( 2018.5.3/エクスナレッジ)

・デービッド・アトキンソン『国宝消滅 イギリス人アナリストが警告する「文化」と「経済」の [ デービッド・アトキンソン ]』(2016.3.3/東洋経済新報社)

 

 

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